反響営業や広告効果測定において、今もなお「電話での問い合わせ対応」は欠かせない手段です。
しかし、通話録音データは大量に蓄積されても、「どこから手をつければよいかわからない」「分析に時間がかかる」という課題が残ります。

そこで注目されているのが、ChatGPTなど生成AIによる通話録音データの有効活用です。
本記事では、電話計測と組み合わせたAI活用のメリットや具体的なステップを紹介します。

通話録音データが眠ってしまう理由

多くの企業では通話録音システムを導入し、日々の顧客とのやり取りを保存しています。しかし実際には、その膨大なデータが「使われないまま倉庫に眠っている」という状況が少なくありません。

なぜ活用が進まないのでしょうか？主な理由は以下の通りです。

通話時間が長く、人手で要点を確認するのに工数がかかる

業種によっては1本あたり10分以上の通話も珍しくなく、数百件・数千件単位で発生する録音を営業担当やマネージャーが全て聞き直すのは現実的ではありません。結果として、重要な情報が埋もれてしまいます。

どの会話が重要か、定性的な情報を定量化できない

顧客の感情や細かなニュアンスは会話の中に含まれていますが、単なる「録音データ」のままでは数字に落とし込めません。そのため、意思決定に使える形にならず、分析自体が後回しになりがちです。

せっかくの顧客ニーズや不満が、活用されないまま放置される

商品に対する要望やサービス改善のヒントが会話に含まれていても、「確認する人がいない」「体系的に整理できない」といった理由から社内に共有されず、マーケティングや商品開発に活かされないのです。

管理や保存コストが膨らむ

通話録音データはファイルサイズが大きく、長期保存にはストレージコストがかかります。活用の道筋が見えないまま「とりあえず保存」しているうちに、IT部門の負担となってしまうケースも少なくありません。

分析できる人材やリソースが不足している

通話録音をマーケティングや営業改善に活かすには、データ分析やテキストマイニングの知識が必要です。しかし、社内に専門人材がいなかったり、既存業務に追われて時間が割けなかったりするため、活用が進まないのが実情です。

つまり「使い道があるとわかっていても、手が回らない」「仕組みや人材が整っていない」というのが現場のリアルな課題です。その結果、宝の山であるはずの通話データが眠ったままになっているのです。

ChatGPTでできる通話録音データの活用例

従来の通話録音は「保存しておくだけ」で終わってしまいがちでしたが、ChatGPTのような生成AIを組み合わせることで、状況は大きく変わります。
AIが自動で要約・分類・分析を行うことで、人手では到底処理しきれない膨大な音声データを短時間で整理し、ビジネスの意思決定に活かせるようになります。

ここでは、ChatGPTを活用した通話録音データの具体的な利用方法を紹介します。

1. 要約の自動化

長時間の通話内容を数行にまとめることで、問い合わせの要点をすぐに把握できます。たとえば「料金に関する質問が中心」「クレーム内容は配送の遅延に関するもの」など、短時間で重要な情報を抽出可能です。営業担当者は聞き直しの手間が省け、スピーディーに次の対応へ移れます。また、上司やチームへの共有も容易になり、対応のスピード感と効率が格段に向上します。

2. 感情分析・態度分類

顧客がポジティブかネガティブかをAIが自動判定できます。通話の発言の傾向を分析することで、クレームや解約リスクの高い顧客を早期に把握可能です。
「満足度が高い通話」「不満が表れている通話」を分類することで、フォローアップの優先度を決めたり、CS（カスタマーサクセス）チームのリソース配分を最適化することができます。

3. FAQやナレッジの自動生成

顧客から繰り返し聞かれる質問をAIが自動で抽出し、社内マニュアルやチャットボットに反映できます。たとえば「支払い方法」「契約更新の流れ」「返品ルール」といった問い合わせを体系化し、即時にナレッジ化することで、対応品質を均一化しつつ、顧客満足度を高めることが可能です。

4. 営業トークの改善

成約につながった通話と、そうでなかった通話を比較分析し、「よく使われるキーワード」や「説明の流れ」を発見できます。これにより、優秀な営業担当者の会話術を全社に展開でき、チーム全体の営業力底上げにつながります。また、新人教育においても「良いトーク例」と「改善が必要なトーク例」を教材として使えるため、教育工数の削減にも役立ちます。

5. 広告・マーケティング改善

通話の中には「どの広告を見て電話したのか」「どんな情報が決め手になったのか」といった生の声が含まれています。ChatGPTでこれらを整理・分析することで、広告コピーやランディングページ改善に直結します。さらに、電話問い合わせの裏側にある「潜在的な顧客ニーズ」や「不満点」を掘り起こし、商品開発やサービス改善にも活かすことができます。

通話録音データの文字起こし

通話録音データを有効活用するためには、まずテキスト化（文字起こし）が必要です。AIによる文字起こしサービスを選ぶ際は、単なる料金や速度だけでなく、以下の観点から総合的に評価することが重要です。

• 精度：専門用語や固有名詞を正しく認識できるか
• 機能：タイムスタンプや話者分離など分析に役立つ情報を出力できるか
• セキュリティ：顧客情報を扱うため、通信の暗号化やデータ管理体制が整っているか

以下に、主要な4つのAIサービスを比較分析します。

Whisper【無料】

「Whisper」は、OpenAIが開発した高精度な音声認識ツールです。音声データのテキスト化機能があり、日本語にも対応。日本語の文字起こしは誤認識率が5.3%という低さで実用的な精度です。
Whisperは完全無料で利用可能な音声認識エンジンで、オープンソースで提供され、カスタマイズが可能です。社内に知識のある方やエンジニアがいる場合は「Google Colaboratory」にて環境構築を行うことで、無料で利用することが可能です（下記サイトから実際に試すことも可能です）。
https://huggingface.co/spaces/openai/whisper

Notta【無料あり】

「Notta」は、高精度かつ多機能なAI文字起こしサービスとして知られています。
多言語に強いため、グローバルなビジネスや、多言語でのコミュニケーションが必要な場面で特に有用です。料金は、無料プランでも月に120分、1回につき3分まで文字起こし可能です。
https://www.notta.ai/

文字起こしさん【無料あり】

「文字起こしさん」はブラウザから簡単に開始でき、インストール不要で即座に文字起こし作業に取りかかれるサービスです。ログを残さず、ユーザーの通話録音データがAIの学習に利用されたりすることが無いため、セキュリティ的にも安心です。料金は、無料では最初の3分のみ文字起こし可能で、「ベーシックプラン〈1,100円（税込）/月〉」では月に24時間・1ファイル最大90分まで文字起こし可能です。
https://mojiokoshi3.com/ja/

RIMO Voice【無料あり】

RIMO Voiceは、日本語に特化したAIを強みとするサービスで、高度な話者分離機能が特徴です。
AIが自動的に複数の話者を識別し、発言ごとにテキストをブロック分けするだけでなく、法人向けプランでは声紋登録により「誰が話したか」をより正確に認識できます。料金は、文字起こしのみ必要な方向けの「文字起こしプラン〈1,650円（税込）/月〉」があり、でも月に2,100分の文字起こしが可能です。
https://rimo.app/about/voice

以上、無料サービスを含め4つの文字起こしAIサービスをご紹介しました。
この文字起こしとChatGPTの組み合わせによって、通話録音データは単なる「保存用アーカイブ」から「価値あるマーケティング資産」へと進化するのです。

データ形式と実運用の流れ

実際の運用では、通話録音を文字起こししたデータを、CSVやJSON形式に整理します。Google スプレッドシートやExcelを使い、下記のような形式のデータを用意します。

CSV形式の例

通話ID, 発話者, 内容, timestamp
001, 顧客, 商品はいつ届きますか？, 00:00:05
001, 担当者, はい、来週の火曜に発送可能です, 00:00:12

また、Google Apps ScriptやGoogle Sheets APIを使うと、JSON形式でのエクスポートも可能です。
JSON形式のほうが都合が良い方はそちらを選択して下さい。

JSON形式の例

{
  "call_id": "001",
  "conversation": [
    {"speaker": "顧客", "text": "商品はいつ届きますか？", "timestamp": "00:00:05"},
    {"speaker": "担当者", "text": "はい、来週の火曜に発送可能です", "timestamp": "00:00:12"}
  ]
}

こういった形で構造化すれば、ChatGPTに投入して効率的に要約・分析が可能です。さらにCRMやBIツールと連携すれば、売上直結のデータとしても活用できます。

ChatGPT活用のメリット

ChatGPTを通話録音データに活用することで、単なる「業務の効率化」にとどまらず、売上や顧客体験の向上にも大きな効果をもたらします。具体的には次のようなメリットがあります。

人手での確認作業を削減し、大幅な効率化を実現

これまで数十分～数時間かけて通話を聞き直し、要点をまとめていた作業を、AIが数秒～数分で自動処理します。担当者は確認作業から解放され、顧客対応や営業活動など「本来の業務」に時間を使えるようになります。結果として、チーム全体の生産性も飛躍的に向上します。

定性的な「会話」を定量的に分析し、改善施策につなげやすい

顧客との会話は「声のトーン」「不満の表現」「よく出る質問」など、数値化しにくい情報を多く含みます。ChatGPTを使えば、これらを自動で分類・タグ付けし、グラフやレポートに変換可能です。
これにより、「クレームの多いテーマ」「購入につながるキーワード」などが明確化され、改善施策を立てやすくなります。

営業改善・広告効果向上・顧客満足度アップを同時に実現

AI分析で得られた知見は、営業部門ではトーク改善、マーケティング部門では広告コピーの改善、カスタマーサポート部門では対応品質の均一化に役立ちます。
つまり、一度の分析が複数の部署で活用でき、組織全体の成果を底上げできるのです。

AI活用は単に「分析担当者の負担を軽減する」だけでなく、通話データを企業の資産として最大限に活かし、反響営業の成果最大化に直結する強力な武器となります。

項目	導入前（従来の運用）	導入後（ChatGPT活用）
重要情報の抽出	顧客の要望や不満が埋もれ、活用されない	AIが感情分析・キーワード抽出を実施、改善ポイントを明確化
分析工数	高く、担当者の負担が大きい	大幅に削減、営業担当者は次の対応に集中可能
改善サイクル	長く、施策に反映されるまで時間がかかる	高速化、広告や営業施策にすぐ反映可能
成約・広告効果	部分的にしか把握できず最適化が難しい	成約や広告反応に直結する情報を取得、反響営業の成果向上

ChatGPTに依頼するプロンプト例

実際にどのような「プロンプト（AIに要求する命令文）」をChatGPTなどの生成AIに投げればよいのかを、目的・用途別に共有します。

1. 通話内容の要約

プロンプト例

以下の通話データから、各通話IDごとに「顧客の質問」と「担当者の回答」を簡潔に2〜3行で要約してください。
重要な情報がわかるようにしてください。

想定出力例

通話ID 001:
顧客が商品到着日を質問。担当者は翌週火曜に発送可能と回答。

2. FAQ化・ナレッジ抽出

プロンプト例

以下の通話データから、よくある顧客の質問とその回答を抽出し、FAQ形式にまとめてください。
Q&A形式で出力してください。

想定出力例

Q: 商品はいつ届きますか？
A: 来週の火曜に発送可能です。

3. 感情分析・対応分類

プロンプト例

以下の通話データから、各発話ごとに顧客の感情を「ポジティブ／ネガティブ／ニュートラル」で分類してください。
また、担当者の対応が適切かどうかを「良い／改善が必要」で分類し、その理由も簡単にコメントしてください。

想定出力例

通話ID 001:
顧客発話: 商品はいつ届きますか？
  感情: ニュートラル
担当者発話: はい、来週の火曜に発送可能です
  対応: 良い（質問に対して明確かつ迅速に回答）

4. 改善ポイント抽出

プロンプト例

以下の通話データを分析し、営業・対応の観点で改善できるポイントを箇条書きで抽出してください。
顧客満足度向上や成約率向上につながる具体的な改善提案を含めてください。

想定出力例

通話ID 001:
・顧客の質問に即座に回答できているが、追加で配送方法や到着予定時間の詳細を添えると、より安心感を与えられる。
・顧客の関心を引き出す質問（例: 「ご利用目的は何ですか？」）を追加すると、クロスセルや追加提案のチャンスになる。

まとめ：電話計測サービスと組み合わせる価値

電話計測サービスを導入することで、「どの広告や施策から電話が鳴ったか」を可視化することが可能です。これにより、反響営業の成果を数値として把握でき、広告費の無駄を減らすことができます。

さらに、通話録音データをChatGPTなどの生成AIで解析すれば、単なる件数や発信元の把握にとどまらず、次のような分析も行えます。

• 広告効果の可視化：どの媒体やキーワードが電話問い合わせにつながったかを詳細に把握
• 顧客ニーズの抽出：通話内容から顧客の課題や要望を整理し、営業戦略や商品改善に反映
• 営業品質の向上：成約につながった通話の共通点を抽出し、社内ナレッジとして共有

弊社の提供する電話計測サービス「コールマーケティング」では、二者間通話録音をオプションで提供しており、1番号あたり200円で利用可能です。これにより、通話内容を記録・解析し、より具体的な改善ポイントや顧客対応の精度向上に活用できます。

加えて、最短1日で電話番号を発番できるスピード感と、導入から運用まで伴走するフルサポート体制により、初めての方でも安心してスタートできます。

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